「見なし残業」とは、企業が従業員に支払う給与の計算根拠となる労働時間に、あらかじめ含まれている一定時間の残業(時間外労働)のこと。
みなし残業制度は、この残業を含んだ労働契約です。 みなし残業は「固定残業」とも呼ばれています。
通常、従業員が労働時間外に業務を行えば、企業は基本給のほかに残業代を支払います。しかし、みなし残業制度を導入している場合、企業は一定時間の残業代を給与に含めて支払うことになります。
みなし残業は、以下の2つの種類に分けられます。
- 固定残業代制
従業員の実際の労働時間にかかわらず、基本給や年俸などに固定の残業代が含まれます。原則として、月に何時間分の残業代が含まれるのかを定めておく必要があります。
- みなし労働時間制
実際の労働時間を把握しづらい職種に対し、実働時間にかかわらず残業を含めた毎月の労働時間をあらかじめ定めて給与を支払う制度です。定めた労働時間のうち、1日8時間を超えた時間がみなし残業に当たります。
みなし残業は、企業にとって以下のメリットがあります。
- 残業代を給与に含めることで、企業の労務管理の負担が軽減される
- 従業員が残業した場合でも、給与の増額を抑えられる
一方で、みなし残業は従業員にとって以下のデメリットがあります。
- 実際の残業時間にかかわらず、みなし残業分の残業代が支払われる
- みなし残業時間を超えて残業した場合、割増賃金が支払われない場合がある
なお、みなし残業制度は、労働基準法で定められた「裁量労働制」や「事業場外労働制」のいずれにも該当しない職種にも適用することができます。
みなし残業制度を導入する際は、以下の点に注意が必要です。
- みなし残業時間の適正な設定
みなし残業時間は、従業員の実際の残業時間に基づいて設定する必要があります。また、みなし残業時間を超えて残業した場合は、割増賃金が支払われる必要があることを従業員に周知しておく必要があります。
- みなし残業時間の明確化
みなし残業時間は、労働契約書や就業規則などに明確に記載しておく必要があります。
- 従業員の同意
みなし残業制度を導入する場合は、従業員の同意を得る必要があります。
みなし残業制度は、適切に運用すれば、企業と従業員の双方にメリットをもたらす制度です。しかし、制度を導入する際には、上記の点に注意して運用することが重要です。
ブラック企業に多いですね
はい、ブラック企業にみなし残業制度を導入しているケースは少なくありません。
ブラック企業は、従業員の労働時間を過度に長時間化させて、長時間労働による過労死や過労自殺を誘発するなど、労働者の権利を侵害する企業です。
みなし残業制度は、企業が残業代を給与に含めることで、従業員の残業時間の把握を難しくします。そのため、ブラック企業はみなし残業制度を悪用して、従業員に過剰な残業を強いることがあるのです。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- みなし残業時間を過剰に設定する
みなし残業時間は、従業員の実際の残業時間に基づいて設定する必要があります。しかし、ブラック企業はみなし残業時間を過剰に設定することで、従業員に過剰な残業を強いることがあります。
- みなし残業時間を超えて残業しても割増賃金を支払わない
みなし残業制度を導入している場合、みなし残業時間を超えて残業した場合は、割増賃金が支払われる必要があります。しかし、ブラック企業はみなし残業時間を超えて残業しても割増賃金を支払わないことがあるのです。
- みなし残業時間の明確な規定がない
みなし残業時間は、労働契約書や就業規則などに明確に記載しておく必要があります。しかし、ブラック企業はみなし残業時間の明確な規定がないことがあるのです。
そのため、みなし残業制度を導入している企業は、ブラック企業である可能性が高いと言えます。
もちろん、みなし残業制度を適切に運用している企業も存在します。しかし、ブラック企業に就職・転職を検討している場合は、みなし残業制度の有無やみなし残業時間の設定などを十分に確認しておくことが重要です。